NHKの『神の数式4』

NHKの『神の数式4』











小島寛之著『確率的発想法―数学を日常に活かす―』という書籍を紹介する。


確率的発想法とは、不確実性をコントロールするための推論のテクニックです。不慮の事故や災害、失業や倒産など、自分に降りかかってくる不確実な出来事をはっきりと対象化し、それに適切な戦略をもつことなのです。武器となるのは、勿論、「確率」です(3頁参照)。


確率を推測する方法論として、最も古典的にしてスタンダードであるものは、統計的オッズを利用する方法です。要するに、過去のデータを未来に対しても適用する考え方なのです。遺伝子で有名なメンデルの法則を基に説明します。メンデルは、エンドウの形質を表わすΩ={黄色・丸、黄色・しわ、緑色・丸、緑色・しわ}という標本空間に対して、315:101:108:32という観測結果から、その比例を簡約化した9:3:3:1というオッズを想定しました。この考え方の背後には、次のような思想があったと想像されます。第一に、エンドウの形質の表出メカニズムには、「単純にして美しい自然科学的な確率法則」があるに違いないこと。第二に、その確率法則は、大量の観測によって近似的に確認されるだろうこと。第三に、その理想的なオッズを前提として、もとのデータを見直す時、そのデータが強く支持されうること。この三つの観点は、確率論の研究において、もっとも強く信奉されている思想であり、「大数の法則」と名づけられています。まず、不確実性モデルの標本空間を、例えば、Ω={a,b,c,d}とし、オッズをL(Ω)=x:y:z:wとします(ただし、始めから正規化して、x+y+z+w=1としておきます。つまり、各文字は直接に確率となります)。この時、「この不確実現象を多数のN回繰り返し観測し、起こった個数を数えると四つのステイトa、b、c、dの起こった回数(頻度)が、限りなく(回数)×(確率)、すなわちNx,Ny,Nz,Nwに近くなる」という法則なのです。例えば、サイコロを6万回投げると1の目の出る回数は、回数と確率を掛けて、(六万)×(六分の一)=(1万回)にほぼ近い、といったことです。これは「1回に対して想定される可能性のオッズは、多数回の観測において実体化される」、ということになります。つまり、「これから起こす一回の試行におけるオッズ」という、理念的で仮想的な数値が「多数回の観測」という現実の行為の中で頻度の比として確認されることを意味しています。このことは17世紀の数学者ヤコブ・ベルヌイ氏によって限定的ながら数学的に証明され、20世紀になってアンドレ・コルモゴロフ氏という数学者によって完全に証明されることになりました(41頁参照)。


小島寛之氏著の『確率的発想法―数学を日常に活かす―』という書籍には、私が尊敬する偉大なる英国の経済学者ケインズ氏のことが記載されていました。ケインズ氏は、不確実性に関する推論を「知識を土台にした信念の程度」で捉え、不確実性下の意思決定を頻度的な確率計算ではなく、「AならばB」といった形式の論理演算に属するものと見なそうとしました。時間についても、物理的な時間ではなく、いわば「歴史的な時間」を重要視していたのです。ケインズ氏は「不確実性と時間」の観点や「不確実性と論理学」の観点に注目していました(113頁参照)。『確率的発想法―数学を日常に活かす―』には、前述した不確実性モデルや大数の法則以外にも、フィッシャーの統計的推定、ベイズ逆確率、ノイマン&モルゲンシュテルンの期待効用基準、ホフマン方式、ベイジアン的確率論、エルスバーグのパラドックス、フランク・ナイトの不確実性、ダウ&ワーラン・メカニズム、リトルウッドの汚れた顔モデル、コモン・ノレッジ、ギルボア&シュマイドラーの事例ベース意思決定理論、金子守と松井彰彦の帰納論的ゲーム理論等々、確率論の理解を深めるたくさんの概念が紹介されています。とても面白い書籍です。


確率論は実生活で頻繁に利用される理論のように思えます。私は確率論が好きです。実際、私が自分の意思決定をする際に拠り所として確率に求めることが多いです。