テレビ東京の『モーニングサテライト3』

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竹内弘高・榊原清則・加護野忠男・奥村昭博・野中郁次郎共著の『企業の自己革新』という書籍を紹介する。


竹内弘高氏・榊原清則氏・加護野忠男氏・奥村昭博氏・野中郁次郎氏共著の『企業の自己革新』という書籍は、自己革新して成功した企業のケース・スタディー集です。取り上げられている企業は、日本電気、西武流通グループ、シャープ、本田技研、富士通、キヤノン、セイコー・グループ、京セラ、旭硝子、小松製作所です。しかし、この書籍は、1986年に発行された書籍ですので、当然、事例もその当時のものであり、これらの企業が現在も日本のエクセレント・カンパニーであるかどうかは分かりません。ただし、当時の企業の成功に自己革新という切り口からアプローチし、企業の成功のプロセスを提言したという意味では、この書籍の価値は変わりません。


企業の自己革新の本質は、「情報の創造」にあります。組織体としての企業の自己革新は、新しい情報を獲得し、創造し、その結果、新しい思考・行動様式と構造を形成することです(11頁参照)。『企業の自己革新』という書籍では、この自己革新を意図的に引き起こす方法を提唱しています。それを「誘発型自己組織化の理論」と述べています(376頁参照)。そして、企業の戦略的変革のプロセスを経時的に示したモデルを提示しています。企業の戦略的環境適応のプロセスは、四つの連続した段階(フェーズ)から成り立っています。第一は、トップによる戦略的なゆさぶりのプロセスであり、戦略的カオスを創造する段階です。これは企業の変化の土壌づくりにあたる段階です。第二は、その中でミドルが新しい発想やアクションを創造する段階であり、トップがそれを認知し、その変化を正当化し支援するプロセスです。第三は、その変化をテコに、企業の様々な部分で変化が促進される段階です。第四段階は、それとほぼ並行して進む段階であり、トップ・レベルで戦略ビジョンが明確化されてゆくプロセスです(378頁参照)。


①トップによるゆさぶり(戦略的カオスの創造)。企業変革プロセスは、まずトップ・マネジメントによる戦略的な展望をもったゆさぶりから出発します。このゆさぶりは、将来の中核技術となり得る分野への徹底した、時には無理とも思えるほどの資源配分という形を取ります。トップのアクションは、あいまいで不定型な問題意識あるいはドリームを背景としたものであることが多いのです。この段階では、トップは何に対して、どういうタイミングで働きかけることが、企業全体に一番大きな波及効果を持つかを真剣に考えているのです。この段階でのトップのアクションは、企業内部に矛盾と危機感を生み出します。それは、問題を解消するというよりは、問題を発生させ、問題や矛盾を激化させるという役割を果たしています。この矛盾・問題を解くべく、ミドルが引き込まれ、彼らの創造力が動員されるのです。企業内の多様な事業分野に波及効果を持つような分野で引き起こされなければなりません。このような事業を変革の戦略的要因と呼びます。傾斜的な資源配分が戦略的要因に対し行われた場合には、企業の様々な部門で問題や矛盾が生み出されることになります。問題や矛盾が引き起こされる範囲が広ければ広いほど、後に続く変化の幅も大きくなります。戦略的ゆさぶりは、現場レベルで様々な矛盾や問題を提起します。その問題の中には、既存の発想や思考の枠組み(共有された思い込みとしてのパラダイム)の中では解決できないものがあります。既存の思い込みの枠組みを打ち破るようなアクションが引き起こされる可能性が高くなります。このような状態を、戦略的カオスの状態と呼びます。トップの働きかけによって、それを生み出すところに、誘発型自己組織化の特徴があります。戦略的カオスは、その内部から新たな戦略秩序を形成する土壌となります。変革のための土壌がないところに、いくら変革の種が蒔かれても、変革は生み出されないのです(379頁参照)。


②戦略的突出。変格の第二段階は、ミドルを中心とした小さな集団による戦略的突出です。それは社内の仕掛け人集団によって自然発生的に生み出されることもあれば、計画的に組織されたプロジェクト集団によって生み出されることもあります。戦略的突出は、トップが生み出した矛盾や問題を、ミドルが前進的に解決することによって生み出されます。前進的な問題解決の過程で、既存のパラダイムの見えない壁が超克されます。そのためには、一定の閾値を越える心理的エネルギーの噴出と、集団内の視点転換をもたらすようなグループダイナミクス(集団力学)が促進されなければなりません。単なる危機や矛盾の激化は、突出を生み出すための必要条件であって、十分条件ではありません。矛盾解決を前進的に行うことができるような条件をつくりだすことが必要なのです。この条件設定はトップの任務です。挑戦的な目標へと追い込まれることによって、共有された思い込みからの飛躍が可能になります。健全な「ひらきなおり」が生じるのです。明確な期限を設定し、他方で手段選択に関するあらゆる制約を取り除くというやり方も、健全な「ひらきなおり」を生み出す手段です。もう一つは、集団の中に十分な異質性を取り込み、それを吻合させることです。異種メンバー間の濃密な相互作用から、既存の技術、職能、事業分野の枠組みを超越したものの見方が生み出され、それが新しいパラダイムの核になってゆくのです。この段階においても、集団の創造的突出を促進するための周辺条件(コンテクスト)の整備に関しては、トップの繊細な管理が重要な役割を演じています。このような突出を、大きな変革のきっかけにするには、突出集団の挑戦をまず成功させることが必要です(382頁参照)。


③変化の拡散・増殖・制度化。第三段階は、突出集団の成功を引き金にして、新しい変化の渦をつくりあげてゆくプロセスです。変化の連鎖反応が起こり、新しいパラダイムの伝播、増幅、共有が始まっていきます。変化の渦を拡大する手段は、複数の集団間に働く力学(インターグループ・ダイナミクス)の活用です。その鍵は人事にあります。集団に自律性を与え、個人の自己超越を促し、異種混合を生み出す戦略的かつ象徴的な人事は、集団間の競争意識を高め、矛盾の前進的な解決への条件をつくりあげます。もう一つの手段は、成功が成功を呼ぶ、変革が変革を呼ぶという変化の勢いをつくりあげることです。突出集団の成功を単発で終わらせないためには、短期間のうちに、第二段、第三段の成功を仕掛けることができるかどうかにかかっています。変革の初期の段階での連続打撃力が、突出の連鎖を長続きさせる鍵です。この段階では、トップとミドルの相互作用、ミドルの突出集団間の相乗的な相互作用が必要です。その相乗効果が大きな渦をつくりあげ、一定の閾値を越えた時に、企業の中に不可逆的な変化が生じるのです(384頁参照)。④戦略ビジョンの具体化。変化の渦を大きくするための最後の、そして最も重要な条件は、トップによる戦略ビジョンの具体化とより普遍的な戦略ビジョンの再構築です。新しい戦略ビジョンの具体化と、ドメインの転換によって、今まで見えなかった新しい地平が見え始めます。ミドル・レベルの成功をより大きなスケールで拡大再生産できるだけの新しい地平と斬新な視角とを切り拓くものでなくてはなりません。それによって生み出されるビジョンと現状との間の緊張関係が、変革の連鎖を一層強化します。新しい戦略ビジョンの再構築の鍵になるのは、企業ドメインの座標軸の転換です。既存の切り口から、普遍的な切り口へと座標軸の転換を行うことによって、新しい地平が現れてきます。このような座標軸の転換は、企業全体としての新たな視点と視角を生み出すのです(385頁参照)。


以上が誘発型自己組織化のプロセスです。このプロセスを理解するには、381頁に掲載されている図12-3を見るとはっきりと分かります。きっとイメージできることでしょう。ひとつ注意しなくてはならないのは、ゆさぶり方です。それはケース・スタディーをしっかり読まないと誤解したゆさぶり方になってしまう恐れがあります。企業小説を読むような感覚で読めますので、ケース・スタディーを含めて、通して読むことをお勧めします。